(一社)日本人形玩具学会編『日本人形玩具大辞典』の勧め
当大辞典は、唯一の「日本人形玩具大辞典」として、日本人形玩具学会が約10年の歳月をかけて編集したものです。
この種の先行する辞典としては、昭和42年(1967)に刊行された斎藤良輔編『日本人形玩具辞典』(東京堂出版)がありますが、もう半世紀も前の辞典で、その後、日本の人形と玩具は種類やジャンルが飛躍的に増え、大きく変貌しました。当学会では、斎藤辞典の項目については取捨選択を行い、その後の調査研究で得られた知見を加え、かつあらたな必要項目を追加しました。またその後の半世紀にわたる人形・玩具の項目選定とその執筆について総力をあげて取り組みました。
その結果、事項項目としては、「人形」とはなにか、「玩具」とはなにか等の基本的な項目をはじめ、伝統的、伝承的玩具、雛人形、五月人形、伝統的な人形劇から郷土玩具、土人形、張子、だるま、こけし、保育・教育・知育玩具、創作人形、現代人形劇、テレビ人形劇、ソフビ系の人形バービー、リカちゃん、ブライス、またキャラクター、フィギュア、デジタルゲームなどについては社会現象としても注目された事項(ファミコン、スーパーマリオ、ポケモン、たまごっち、ガンダム、エヴァンゲリオン、ONE PIECEなど)を中心にして、総計約2300項目を収録しております。
人名項目としては、斎藤良輔編『辞典』では人名項目は10項目に満ちませんが、当大辞典では、京都の人形師、江戸・東京では原舟月、山川永德齋をはじめ、人形師、人形頭師、人形着付師、押絵師、また生人形師、近現代では人間国宝の平田郷陽、堀柳女らの人形作家、創作人形系では中原淳一、天野可淡、四谷シモンら、現代人形劇の川尻泰司、デジタルゲームソフトの開発者・横井軍平などを網羅的に収録しており、他に類書がありません。
巻末には、「人形・玩具関連文献一覧」として年代順に1000点を挙げ、20頁を当て、平安後期の大江匡房『傀儡子記』(1096頃)、近世の『江都二色』、明治の『うなゐの友』などから図譜、図録、図鑑、カタログ、研究調査報告書、連載誌、同人・同好会誌などにいたるまでを網羅しており、これまた他に例がありません。 また「人形・玩具関連施設一覧」として全国に所在する204施設を挙げ、人形館、玩具(おもちゃ)館、郷土玩具館、こけし館、おりがみ博物館、からくり館、オルゴール博物館、ブリキのおもちゃ館、模型博物館、人形劇場、フィギュア博物館、マンガミュージアム、遊園地、テーマパークなどを網羅しております。
人形、玩具、人形劇の研究者、コレクターやマニアから民俗学、保育・教育学、歴史学、日本文学、社会学、マンガ、アニメ、フィギュア、ゲームなどのサブカルチャー論、マスメディア論などの研究者にお勧めしたい次第であります。
2020年4月
一般社団法人日本人形玩具学会会長
増淵宗一(日本女子大学名誉教授)